2024.05.01
DRCの技術力
「業界内での評価機関の地位向上」を目指し
「業界内での評価機関の地位向上」 決して一朝一夕では実現しない、我々が掲げた壮大な目標でした。
その転機が訪れたのは2014年のことでした。本気でこの目標を達成するためには、DRCだけではなく評価機関同士の協力が不可欠だと考え、国内の複数企業でのから評価機関団体を結成しようと決意しました。
知り合いや業界の伝手を頼りに声をかけて回ったところ、多くの企業から「是非一緒に取り組もう」と賛同の声が寄せられました。
そうして立ち上げたのがSES(Society for Evaluation of the Skin)という評価団体でした。参加企業は15〜16社におよび、さらに専門性や影響力を高めるために大学の教授陣にも参画いただきました。
SES立ち上げ後から、加盟企業の意識が明らかに変わりました。
業界内でのさまざまな問題意識や課題を積極的に話し合い、当事者意識を持って自分たちにできることを探す機会が増えました。
そして、SESの未来を大きく変える出来事が起こります。
当時、国内の化粧品業界では「乾燥肌」というワードが乱用され、エビデンスなしに商品が宣伝される状況がありました。これはつまり、化粧品会社の「言ったもん勝ち」状態という状態でした。しかし、効果の有無に関わらず消費者が商品を購入することでクレームが発生する可能性もありました。
業界内ではこの問題について誰も疑問の声を投げかけることがなく、それどころか問題視されていませんでした。そこで、SES全体で「乾燥肌」の定義を検討することになりました。
まさにSESを立ち上げた際の目標に向かい、動き出した瞬間でした。
我々を含む加盟企業たちは早速、「乾燥肌」というキーワードをもとに、「浸透率」や「保湿力」などさまざまな観点から基準となるポイントを探し、本格的に研究を開始しました。これは本業ではなく、あくまでSESとしての活動であり、各企業は日々の業務の傍らで、乾燥肌の評価基準に関する研究を行いました。役割を分担し、結果を持ち寄 って議論を何度も重ね、時には教授にも意見を求めながら少しずつ研究を進めました。
こうして研究を開始してから数ヶ月─。
なんとかSESとしての「乾燥肌」という言葉に対する評価基準を確立することができました。
しかしSESだけで活用し、独占してしまっては元も子もありません。「世の中への責任を果たす」という当初掲げた目標のため、「乾燥肌という言葉の基準について」という形で学会発表を行い、業界全体やメーカー内で周知・浸透していく活動も積極的に行いました。
結果として現在は「乾燥肌」という言葉を使用する場合の基準が定められ、業界内でのスタンダードを構築することに成功しました。
SES設立時の目標が達成された瞬間でもありました。
評価機関からメーカーに対して評価基準を明確にしたという経験は、DRC一企業に限った話ではなく、業界全体にとり大きな変革になったように思います。メーカーから見た評価機関に対する認識が変化し始めていると感じています。
SESという日本初の評価機関団体を立ち上げ、エビデンスを明確にし、評価機関からメーカーへ主体的に基準を定義していく、というこの一連の活動が、業界内全体での評価機関の地位向上と、評価機関の技術レベルアップにつながりました。